湖国と文化編集長 月記 | びわ湖芸術文化財団 地域創造部

近江八幡市安土町にある安土城考古博物館に取材で行った折、近くにある安土城跡まで足を延ばしてみました。以前に、有料・無料駐車場問題が新聞報道されていたのを思い出し、「その後」を確かめに行ったのです。

問題とは  

安土城跡の正面には近江八幡市営の有料駐車場がありましたが、そのすぐ横に同城跡を所有・管理する摠見寺が無料駐車場を造ったのです。その結果、観光客は当然、無料の方を選びます。そこで困った市は対抗措置として無料駐車場の利用者に対してトイレ利用を断るといった内容でした。新聞の論調は「市の税金を使ってトイレや駐車場を造った市の気持ちも分かるが少し大人げない」という事でしたが、無料駐車場を造った寺側の態度も「立派だ」とほめてもおらず、寺と市の関係がうまくいっていないとの印象を強くうかがわせる内容でした。
今回、訪ねてみたところ、駐車場は寺、市営とも無料になっており、有料・無料問題は解決していました。
ところが、もう一つの「トイレ」。駐車場付近から安土城跡正面のチケット売り場にかけての広々とした空間のどこにも「トイレ」らしい建物や標識が見当たらないのです。さらに注意して見ると、どうやら、駐車場の横にある市のガイダンス施設「城なび館」(有料で大人200円)の中にあるらしいのですが、積極的な表示はしてありませんでした。
一方、安土城跡の方はというと、チケット売り場に近付くにつれ、「安土城跡は国の特別史跡である為、トイレの施設はありません」「トイレのあるガイダンスと当山とは無関係である事をご承知おき下さい」などと掲示がしてあり、さらにチケット売り場入り口付近に「特別史跡の為、文化財保護法に基きトイレを造る事ができません。ご承知の上入山願います」と重ねて注意を喚起してありました。
これでは、トイレに行きたくなった観光客はどうしたらいいのでしょうか。

寺側が掲示していた「文化財保護法」について、滋賀県文化財保護課の城郭調査事務所(安土町)に伺うと、「史跡保存が最優先されるため、新たにトイレを造るなどの現状変更は基本的に認められない」でした。もちろん、史跡内で生活をしている場合、生活に支障がないようにトイレ等は認めることになっています。安土城跡の場合、郭跡や大手門跡がある山裾の部分が「グレーゾーン」で、トイレを建てるとすればこの山裾になりそうで、近江八幡市も現在地にトイレを備えたガイダンス施設を新設しています。このトイレを誰でも自由に使えたら問題はないのですが、「有料で目隠しをしている。この辺が問題で、善し悪しの判断は難しい」と城郭調査事務所では話していました。

安土城跡はいうまでもなく文化財の「1級資料」で、その歴史に触れるために全国から人々が訪れます。郷土や寺の誇りといえます。そして安土城跡の一部は戦前から、そして戦後は国や県の手によって大々的に発掘調査や整備事業がされた、広大な城郭遺跡(入山料大人700円)です。こうした状況を考えると「トイレ」は必然だと考えるのですが、どうでしょうか。

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