このほど発行しました「湖国と文化」夏号(第156号)は既にお知らせしているように滋賀県北部地方、いわゆる「湖北」の里人に守られ、拝む人たちを引き付けてやまない観音さまや仏さまを紹介する「観音のこころ」特集号です。その観音さまや仏さまの「ご縁」で、小誌(特集号)が東京・上野公園の東京藝術大学大学美術館に置いていただくことになりました。東京藝大の美術館で7月5日~8月7日(月曜休館)に催される「観音の里の祈りとくらし展Ⅱ」に湖北のホトケさまが多く「上京」されることから小誌にも声がかかったのです。同展を拝観される機会がありましたら、ぜひ、特集号にも目を向けていただければと思います。
とは言っても、特集号は、仏像の名称や形式、見方など鑑賞のイロハ、仏像の美や魅力を紹介する本ではありません。「湖国と文化」は季刊ではありますが、同時代の動きや同時代人のこころに迫る雑誌を目指しています。湖北の人たちがなぜ、観音さまやホトケさまを守り続けてきたのか、そうした心を紹介したいと願っているのです。
長浜市高月町では昨年まで毎年8月第1日曜の暑い日に、集落の一角に建つ観音堂を一日開け放ち、参拝者に無料(志納)で観音さまや薬師仏を公開していました。ここ数年、そのふるさとまつりに通ううちに、お堂で拝見する観音像はもちろん素晴らしいですが、お守りする人たちも同様に素晴らしいと思うようになりました。夏の一日の行事ですが、役員さんらが総出で出迎え、自分たちが守る観音さまがどんなに素晴らしいか話をしてくれます。そして拝観のあと、境内で振る舞われる冷えたお茶や朝に採れたスイカやトマトなどのおいしいこと。小誌ではむしろ、そうした里人のこころを紹介したいと思ったのです。
「観音の里たかつきふるさとまつり」は今年は10月16日(日)に実施されます。無料(志納)を原則に過去30回実施されましたが、昨年から原則として「有料」拝観へと変わりました。有料に踏み切った昨年は募金の竹筒を置いた程度のところもあり、「志納」で拝観される方が多かったようです。有料化2年目、初めて秋に実施する今年は拝観の形も変わり、もてなしの形も変わってくるかも知れません。
ところで、取材を進めるうちにわかってきたことですが、「観音の里」というのは、観音様を「お守りする里」ではなく、観音様に「お守りされている里」だということです。「常に見守られているからありがたい」という声を何人もの人から伺いました。少ない戸数の集落なのに毎年、世話役を選んで観音堂で法要もし、年に一日はお堂を開けて接待も続けてきたのは、こうした「ありがたいと思う心があった」からだと思った次第です。
「湖国と文化」特集号では、高月町「ふるさとまつり」のお堂だけでなく、湖北の町々の観音堂などで祀られている仏さまの拝観の手引きも盛り込んでいます。湖北のお堂や社寺は無住のところが多く、普段は閉まっていて事前予約しないと拝観できないところがほとんどだからです。特集号は、そうしたお堂や里人との橋渡し役になることを願っています。静かな湖北の里を訪ね、世話役さんらの「篤いこころ」と触れてみてはいかがでしょうか。
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観音さまを守るこころを取り上げた「湖国と文化」夏号 今夏の東京藝大大学美術館展のショップにも置かれる - びわ湖芸術文化財団 地域創造部
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