このたび、11月1日が「古典の日」として9月5日に公布、施行されました。この11月1日は、「紫式部日記」によって源氏物語の存在が確認される最古の日(寛弘5(1008)年11月1日)にちなんでのことだそうです。ご当地滋賀県大津市石山寺には、紫式部が源氏物語を草稿した庵が現存しており、この古典の日の制定は、私共にとって非常に心強い朗報です。
この法律の第1条の目的には、「古典が、我が国の文化において重要な位置を占め、優れた価値を有していることに鑑み、古典の日を設けること等により、様々な場において、国民が古典に親しむことを促し、その心のよりどころとして古典を広く根付かせ、もって心豊かな国民生活及び文化的で活力ある社会の実現に寄与すること」とあります。
「古典」は、文学、音楽、美術、演劇、伝統芸能、演芸、生活文化その他の文化芸術、学術又は思想の分野における古来の文化的所産であって、我が国において創造され、又は継承され、国民に多くの恵沢をもたらすものとして、優れた価値を有すると認められるに至ったものと定義されています。また、11月1日には、国民が古典に親しむ機会をつくることや古典の学習・古典を活用した教育の機会の整備など、必要な施策を講じ、地方自治体においても自主的かつ主体的な活動に努めるように条文化しています。
明治の芝居小屋から平成の芝居小屋へ転じた「長栄座」事業もいよいよ11月3日4日に迫り、ただいま追い込みの制作作業に追われています。特に伝統と創造シリーズⅢ「変わりゆくもの 変わらざるもの」では、時代と共に変わりゆくものの姿と時代を超えても変わらないものの姿を、平家物語の登場人物と近江の自然にスポットを当て、平家の熱情が今もなお山の端に移る残照として輝きを増していることに思いを込め、「平家残照」と題して上演いたします。
近江を題材にした演目としては、木曽義仲と巴御前の別離を描いた邦舞「鞆絵(ともえ)」(4日)、妓王と仏御前の物語として創作長唄「君立ち川」(3日)、人間国宝常磐津一巴太夫師の新作常磐津「近江八景」(3日)があります。また、滋賀県邦楽邦舞専門実演家養成所の研究生たちを中心に、滋賀県邦楽邦舞専門集団を結成し、後白河法皇がこよなく愛した梁塵秘抄の歌謡集より「十のうた」を箏と女声合唱でお届けいたします。
本年は吉川英治氏の生誕120年没後50年にあたり、「新・平家物語」から「序曲」を総勢31名で演奏いたします。ほかに、横笛と滝口入道の悲恋を描いた創作長唄「横笛」の演奏、新歌舞伎十八番より長唄「静と知盛」を素踊りにて上演いたします。ロビーでは、近江の新しい伝統産業展の展示、高校生や地元の方々によるお茶席も皆様をお待ちしております。
涼風澄み渡る錦秋の一日をお友達やご家族とご一緒に、平成の芝居小屋「長栄座」にぜひお越し下さいませ。