第62回滋賀県写真展覧会(令和5年度)

滋賀県写真展覧会審査結果

出品作品内訳

出品作品総数 応募者数 知事賞・
特選・入選数
584点 244人 125点

審査員

山中 健次[写真家・(公社)日本写真家協会(JPS)会員]
水野 真澄[写真家・(公社)日本広告写真家協会 (APA)会員]

入賞作品

総評

1次、2次の審査を終え入賞・入選を決定しましたが、作者が何を思ったのか、何に感動したのか、何を訴えようとしているのかが入賞・入選・選外の分岐点になりました。作品としての完成度が高くても、既にどこかで発表された写真に似た作品は新鮮味に欠けるため、上位には行きませんでした。作者の個性、「私にしか撮れない作品」であることが大切です。上手でなくても良いのです。結果を恐れずに自分流の作品を撮ってください。(山中健次)

 

知事賞

「想いを残して」 寺田 吉廣 (草津市)

選評

限界集落を撮影した作品でしょう。この家の誰かが周辺の農村風景を描いたと思われる大きな絵が目に付きます。しかし、既に誰も住んでいないようで、周囲も荒れています。全国各地で問題視されている過疎化、少子高齢化などの悲しい現状を端的に表現しています。(山中健次)

 

特選・滋賀県議会議長賞

「伝承者」 古川 博 (長浜市)

選評

暗い夜空に弧を描く杖から生まれる輝く星の帯がとにかく美しい。「魔法使いの弟子」を思い浮かべた。木組の土台に乗せた筒花火に覆い被さる人物という現実的なものを、火のアンバー色をクリアな色に火花に光芒を出して星に見せることで出たファンタジー感が興味深い。(水野真澄)

 

特選・滋賀県教育委員会教育長賞

「追憶」 木下 三千代 (近江八幡市)

選評

追憶と言うタイトルには些か疑問を感じました。一般的には会場で花火だけを撮ることが多いと思いますが、ぼんやりと人の気配がし、他には誰もいなくて家並だけが写されています。花火が見え、音も聞こえる場所ですが、静寂だけが漂っています。(山中健次)

 

特選・びわ湖芸術文化財団理事長賞

「帰るところ」福島 正則 (草津市)

選評

剥製になった鹿が見ているのは、削られ人工物が造作された山の斜面か自然災害であっけなくなぎ倒された木々が散乱する切り開かれた山か、それともガラスに映った去っていく人物の後ろ姿か。モノクロにすることでドキュメンタリータッチの重みが増しました。(水野真澄)

 

特選・滋賀県写真連盟会長賞

「成長の記録」井口 達也 (近江八幡市)

選評

背筋を伸ばし、手をちゃんと前で整え、魚屋さんで使うような計量器にミーアキャットが乗っています。可愛いですねぇ。そして、計測したところジャスト1kg。微笑ましく、実に楽しい光景です。作品として必要な部分だけを的確に切り取っています。(山中健次)

 

特選・中日新聞社賞

「緑水の航跡」石井 勝男 (東近江市)

選評

静かな水鏡に映る山影の中をゆったりと進むボートが作り出す航跡を見過ごさず、速いシャッターでなめらかさをも写せていてお見事です。構図的には濃い緑と水色の部分を対角線に切り裂いたように見えて印象的です。(水野真澄)

 

特選・朝日新聞社賞

「小さな祈り」長谷川 新太郎 (大津市)

選評

豪雪地帯の集落のようです。昔ながらの建物に雪が積もり、地面も雪で覆われています。枯れた木の枝にも少し雪が残っています。そして、その集落を守るかのように小さな祠があります。寒い風景ですが、集落の人々の温かさを感じます。(山中健次)

 

特選・共同通信社賞

「バレリーナ」田口 明 (栗東市)

選評

「瀕死の白鳥」に見えたのでしょうか。乏しい光の中で、しおれた蓮の葉が羽根のようにも見えますね。大きな葉に覆われて守られているようにも見えて、寂しさ、悲しさとともに作者の優しい眼差しも感じられます。花びらにニュアンスがみえたら儚さも表現できたと思います。(水野真澄)

 

特選・BBCびわ湖放送賞

「猛暑日」白井 和利 (野洲市)

選評

今年は想像を絶する暑い夏でした。学校の課外活動を実施するにしても、いつも水分補給などが必要でした。木陰に児童・先生が集まって昼食の時間のようですが、今年は忘れられない猛暑の夏になったことでしょうね。(山中健次)

 

特選・京都新聞賞

「夏池」 折笠 さつき (守山市)

選評

露出はハイキーに軽やかに、色合いは青めに涼しげに玉ボケを効果的に使い、池をモチーフに睡蓮・蜻蛉・アメンボと夏空を配置した爽やかな夏の組み写真です。規定のアスペクト比にとらわれない横長の切り取り方は水面の雰囲気も表せていると思いました。(水野真澄)

特選・NHK大津放送局長賞

「店先」吉村 英光 (栗東市)

選評

文字が入り込んだモノは作品としては敬遠されがちですが、多くの商品の看板を掲げ、おばあさんが少し派手な衣装で太鼓を叩きながら売り込んでいる様は、思わず吹き出してしまいそうになります。演出かもしれませんが、楽しいですね。(山中健次)

 

特選・KBS京都賞

「風のダンス」中村 和樹 (高島市)

選評

ブルーグリーン、水色、ブルー、黄緑、白色と紺色。美しい色の流れが何本も重なっている。布が風に煽られて揺れているのだという。シャッターを切るたびに新しい絵柄が現れる。シャッタースピードも様々試しただろう。撮影者が楽しんでいることが伝わってくる一枚です。(水野真澄)

 

特選・エフエム滋賀賞

「Sky Walker」西村 忠員 (高島市)

選評

ボールを持った選手などに躍動感があり、スポーツ写真として的確な瞬間を捉えています。床に倒れた選手がいることで試合の激しさも表現できています。それぞれの選手の表情にも緊迫感があり最高のパフォーマンスを写し止めています。(山中健次)

 

特選・毎日新聞社賞

「木漏れ日をみつけて」杉田 峰子 (長浜市)

選評

青色の微妙な色合い、花びら、葉、茎の質感までよく写せている。背景の選び方は画面全体としても主題の活かし方としても気を配っている。サブのブルーには不自然さを感じるが、主題の花が派手ではないが際立って美しい。(水野真澄)

 

特選・読売新聞社賞

「朽廃」小森 光司 (甲賀市)

選評

廃屋だと思いますが、家の全部を撮影するのではなく、その象徴的なところを切り取り、黄色いバケツなどには生活感が少し残っています。戸のガラスにはいつもの様に光が差し込んでいますが、時は容赦なく過ぎ去って行っているようです。無常です。(山中健次)

 

特選・時事通信社賞

「Fly」木村 孝一 (草津市)

選評

雪の日を待って撮影されたのだろう。遠景を雪で覆い極端にハイキーで撮影することで、黒っぽい鳥だけを実像として写そうという墨絵のイメージのアイデアはよいと思います。せっかく組み写真にしたのに、3枚とも引き具合が同じようになってしまったのは残念でした。(水野真澄)

 

特選・産経新聞社賞

「水玉のある世界」玉田 美佐緒 (近江八幡市)

選評

蓮の葉の上にたくさんの水滴があり、リズミカルで綺麗です。そして、その内の1つの水玉の中に包まれるように小さな可愛いアマガエルが1匹。しかし、トリミングをしたのでしょうか、蓮の葉のピントが甘く、カエルにノイズが出ていることが惜しまれます。(山中健次)