第59回滋賀県写真展覧会(令和2年度)

滋賀県写真展覧会審査結果

出品作品内訳

出品作品総数 応募者数 知事賞・特選・入選数
444点 221人 136点

審査員

森   誠 氏 [写真家・(公社)日本広告写真家協会会員(APA)]
山本 功巳 氏 [写真家・(学法)日本写真映像専門学校講師]

入賞作品

総評

昨今のコロナ禍により撮影活動に制限がある中、どんな作品が集まるか心配していましたが、まったく気にならない結果となりました。皆さんへ言える事ですが、普段なら気が付かない瞬間や切り取り方、カメラのレンズを通して表現する方法、写真家としての視点を持っており全体的なレベルの高さを感じます。今回の審査も素晴らしい数々の作品があり、選外にする責任の重さを感じています。
 ただ、写真は素晴らしいのに額装が整っていないものや、プリントが折れているなど出展作品への大切さも再度理解して頂き、新たな作品作りに期待致します(森・山本)。

 

知事賞

「SQUARES」 宮﨑 真一 (長浜市)

選評

色、デザイン、丸いものも入っているにも関わらず、上手くまとめています。違う素材のものを同じ目線で3枚集めるのはとても難しかったのではないでしょうか。コンテンポラリーを勉強されている方なのではないでしょうか。4隅まで注意しながら撮影することはとても難しいことです。異なる被写体にも関わらず同じ目線で撮影できているのも素晴らしい点です(森・山本)。

 

滋賀県芸術文化祭50回記念賞

「一日のはじまり」 田中康雄 (野洲市)

選評

視点が面白いです。右の電車に映り込んでいる人物に観る人の目線を最初に惹きつけさせ、次に大きなオブジェに目を向けさせて力強さを印象づけさせています(森・山本)。

 

特選・滋賀県議会議長賞

「タイムスリップ」 藤本志郎 (大津市)

選評

観る人にとってタイトルは最後で知るものです。とはいえ、タイトルと作品がずれているのは良いものではありません。この作品はまさにタイトルとぴったりです。インパクトがとにかくあり、観る人を立ち止まらせる力があります。縦・横・縦と並べたことで波のような広がりも感じます。時間を止める芸術である写真の要素がギュッと詰まったインパクトと赤色が効いた作品となっています(森・山本)。

 

特選・滋賀県教育委員会教育長賞

「あの空の下で」 折笠さつき (守山市)

選評

雨の日に観たら晴れやかな気分になります。赤の濃度の使い方が上手く、ふんわりとパステル調でまとまっています。撮影から仕上がりまで目線が均一であるように思えます。真ん中の位置にあえて難しい作品を2枚目にはめて仕上げている点も作者の高い力量を感じます。3枚並べることでインパクトも生まれ、より良いものになっています(森・山本)。

 

特選・びわ湖芸術文化財団理事長賞

「カルガモ達の春」 原田直 (大津市)

選評

じっくり観るほど力強さを感じる作品です。色の濃度、コントラストを高めに設定している点も作品にあっています。バリエーションに富んだ作品が並ぶとバランスが悪くなりがちですが、カルガモの日常を4枚の写真におさめ、時間の経過も感じ、観た人を楽しませてくれる作品です(森・山本)。

 

特選・滋賀県写真連盟会長賞

「それぞれの刻」中村久和 (長浜市)

選評

サークルや直線など幾何学的な所に、様々な人々が映し出されています。会話をしている人、歩いている人など、寄り添いながら生きているという人の営みや人情などを感じる作品です。空間や被写体の位置などを更に大切にして撮影すれば、観る人の視点が集まり、奥行きや広がりなどを作品に生み出すことができます。更に力強い印象のある作品になるのではないでしょうか(森・山本)。

 

特選・共同通信社賞

「見つけたぞ」 伊吹忠夫 (高島市)

選評

ピントを合わせてシャープさもありしっかりと撮れています。まるでレンブランドの肖像画のようにも思えます。1本1本映し出された毛、きらりと光るひげも神々しく美しいです。縦位置で撮影し、構図を考えて冷静に撮影されている印象です。被写体の猫が今にも飛び出しそうに感じました(森・山本)。

 

特選・NHK大津放送局長賞

「生きる」 小椋俊道 (愛知郡愛荘町)

選評

牙を出して怒っている猫とその猫を不思議そうに見つめる猫2匹。おんぼろ車とうまく対比していて興味深い作品です。作品の前に立つと観ている人はまるでこっちをにらんで猫に怒られているような錯覚を覚える立体感と奥行き感のある力強い作品に仕上がっています(森・山本)。

 

特選・中日新聞社賞

「都会の喧騒」 村居幸路 (長浜市)

選評

鏡に写り込んでいる人物に焦点を当てた点が良いです。撮影時間は夕方でしょうか。光と影も鏡に映っていてまるで人生まで写り込んでいるようにも思えました。現実と非現実、ネガティブとポジティブな世界が絡み合い、複雑な人間関係を彷彿させます。大きいプリントで観てみたいです(森・山本)。

 

特選・BBCびわ湖放送賞

「送りお盆」 吉村英光 (栗東市)

選評

シンプルの中に、質感の描写や光の入り方を上手くまとめています。年配の女性たちが生き生きとしています。写真の大切な役割である「記録する」ということを、再確認させられる1枚です(森・山本)。

 

特選・エフエム滋賀賞

「蒼天駆ける」 谷口忠臣 (蒲生郡日野町)

選評

1930年代のモダニズム写真を彷彿させる印象を受けます。幾何学的で白と黒で仕上げた世界はまるで映画のシーンのようにも思えます。静かな動きを感じさせます。作者の気持ちが素直に伝わってくる1枚です(森・山本)。

 

特選・KBS京都賞

「Tower」 宮上浩 (大津市)

選評

京都タワーより大きな女性がいてもおかしくないと思えるほど違和感を感じない興味深い作品です。作者は被写体である少女にかなり接近しつつ、下から撮影したと思いますが、臆することなく堂々とした少女の姿が印象的です(森・山本)。

 

特選・読売新聞社賞

「蓮」 土堀一三 (甲賀市)

選評

飛んでいるハチに愛情深く蜜を与える蓮。絶妙な角度に撮影されています。ライティングしたのではと思うほど、美くしい色合いも心に残ります(森・山本)。

 

特選・京都新聞賞

「としつき」 秋田雅典 (大津市)

選評

琵琶湖でしょうか。静けさを感じます。その場の空気感を写真で表現しようとすると、まずは構図と奥行き感が大事です。角度によって水の面積を変えて、上手くバランスよく表現できています。モノクロともうまく合った作品ですが、水面を光らせる、モノクロのコントラストをもっとつけるなどのレタッチでまた違った印象になると思います。今後楽しんでみてください(森・山本)。

 

特選・産経新聞社賞

「密」 杉立好正 (草津市)

選評

2020年の「コロナ禍」の中、この写真が目を引きました。タイトルもぴったりする1枚です。このインパクトと大きさでピント位置などが気にならなくなる1枚です。額装が手作りなのもイメージに合っていて素晴らしいです(森・山本)。

 

特選・朝日新聞社賞

「視線」 小林正治 (東近江市)

選評

女の子がちらっとこちらを見ているのが印象的です。懐かしい印象を感じますが、手に持つスマホで2020年を上手く表しています。近くから作品を鑑賞すると、少女の強い視線を感じ、まるで自分が見られているような気持ちになる作品です。じっくり見ていただきたいです(森・山本)。

 

特選・毎日新聞社賞

「愛車」 松村里子(草津市)

選評

トラック運転手さんの世界を2枚でうまく表現されています。よく見ないとわからない指のある靴下もいいです。固いもの(車)を撮っているにも関わらずやわらかいイメージを受けます。色づくイチョウなどで季節の表現や、わざと不器用にボケた効果は作品をより一層味わい深いものに仕上げています(森・山本)。

 

特選・時事通信社賞

「浮かぶハイウエイ」 伴光藏 (甲賀市)

選評

夜景と曲線との対比が上手く描かれています。夜景を撮るとネオンが真っ白になることもありますが、上手く露出の調整ができています。煙突の煙も情緒を感じ、シャープさやムーディーな雰囲気は、深みを生み出し、じっくり観たくなる作品です(森・山本)。