第51回滋賀県写真展覧会(平成24年度)

出品作品総数

589点

応募者数

302人

入選数

145点(※芸術文化祭賞・特選含む)

審査員

水野克比古氏 [(社)日本写真家協会会員(JPS)]
北奥耕一郎氏 [(社)日本写真家協会会員(JPS)]

入賞作品

総評

今回の審査にあたり、過去3年の傾向を見てから審査に臨みました。今までの繰り返しにならぬよう配慮し慎重に審査いたしました。その結果、作者と被写体の間に心の通い合いを感じられる素晴しい作品が上位を占めました。他の芸術のジャンルと比べると「時間」を一瞬に捉え、作者の生きている証が表現できるのが写真の魅力。県の写真愛好家が写された「時の流れ」や「命の証」が見事に作品に反映されていたと思います。

芸術文化祭賞

「のれん」  北中 喜美子

「のれん」  北中 喜美子 (大津市)

選評

どこの花街なのかわかりませんが心惹かれる作品です。瞳のピントが少し甘いのが気になりますが優しい微笑みが見るものの心を引きつけます。黒染めの暖簾(のれん)と白い顔というダイナミックレンジ(明暗差の幅)をうまくまとめました。バックの切り込みも良く、女性の笑顔を最大限に引き出した作者の力量が素晴らしい。

特選・滋賀県議会議長賞

「誕生」  眞本 尚二

「誕生」  眞本 尚二 (大津市)

選評

ハスの花に寄り添った鬼やんまと右下に見える可愛い赤ちゃん。淡い色調の中、水辺の雰囲気も出ていて昆虫写真としては文句なしの出来栄えです。ピントもシャープで、ぼかしを活かした背景がほのぼのとした情愛を物語っています。センスの良い額装もこの作品を生かしています。

特選・滋賀県教育委員会教育長賞

「夜のお茶会」  池田 誠

「夜のお茶会」  池田 誠 (彦根市)

選評

主役である彦根城と玄宮園の背景描写が良く、若い人がお茶会に参加することで時代の新旧の対照的な面白さを感じます。人物のピントをはずしたことで肖像権の問題をクリアできただけでなく、不思議な感じになりました。

特選・滋賀県文化振興事業団会長賞

「ドライバー」  寺田 功子

「ドライバー」  寺田 功子 (守山市)

選評

運転手は食事にでも行っているのか、あるいは仮眠でもしているのでしょうか。駐車場の照明で役者絵が浮き上がって人物化している面白い作品です。こういう出会いに現代性を感じますし、左後方に荷台の横縞が写っているのも効果をあげています。写真でないと表現できないテーマであり、いろいろ想像を引き立ててくれる作品です。

特選・滋賀県写真連盟会長賞

「花火」  横山 達弘

「花火」  横山 達弘 (長浜市)

選評

びわ湖の花火大会だと思いますが会場の雰囲気や湖面の美しさが良く出ています。多重露光したことで、スケールの大きさと華麗さが表現され、多く寄せられた花火写真の中で秀逸でした。ただ画題に一工夫欲しいところ。そのときの本人の心境を語るべきだと思います。

特選・エフエム滋賀賞

「惑う人々」  松村 里子

「惑う人々」  松村 里子 (草津市)

選評

人が黙々と霧の中を歩いている。駐車場の枠線と人物の配置がピッタリで、霧で遠くが見えない面白さがあります。画題が適切で、霧のために迷っている人々を「惑う人々」と言い切ったところがお見事です。

特選・京都新聞社賞

「宿場の主」  北川 久美子

「宿場の主」  北川 久美子 (東近江市)

選評

道ばたでズバリこちらを睨みつけている威厳たっぷりの猫の表情が何かを訴えてきます。ピントがシャープなので毛並みが綺麗に描写されています。後ろの宿場町だけではなく、この主に登場してもらったことで力強い作品となりました。右後方の古いポストも効果をあげています。

特選・時事通信社賞

「昇華」  杉立 好正

「昇華」  杉立 好正 (草津市)

選評

焼ける空の中を花が天に昇るかのように表現した作者の力量を高く評価したいと思います。背景のボケの処理にはもっと良い方法があったかもしれませんが、ただの生態写真で終わらせずに思い切った作風で見せてくれました。これからの写真表現を暗示する作品だと言えましょう。

特選・産経新聞社賞

「昭和夢芝居」  松本 恭博

「昭和夢芝居」  松本 恭博 (彦根市)

選評

一見何でもない風景を利用してドラマを語らせています。木の下の人物などを暗がりの中にうまく取り入れて不思議な雰囲気がでています。もう少し遅い時間に撮影すれば水銀灯の明かりが舞台照明のような効果となり、さらに良くなったことでしょう。

特選・BBCびわ湖放送賞

「そっと」  熊川 洋次

「そっと」  熊川 洋次 (大津市)

選評

若い女性の手でしょうか、人とゴマフアザラシとの温かい交わりを感じます。瞳にキャッチアイが入っていませんが、優しげな表情は良く出ています。そして、虹のような背景がさわやかな清涼感を醸し出しており、力強くするために暗く表現した作品が多い中で、このような明るい写真は貴重です。

特選・NHK大津放送局長賞

「赤いゼブラ」  益野 忠彦

「赤いゼブラ」  益野 忠彦 (大津市)

選評

都会の風景作品の中では秀逸な作品。雨に濡れた横断歩道の赤色のゼブラがひと際目立っています。デジタル加工かと思いましたが奇抜な横断歩道が多いルーマニアだと聞き納得。細長いサイズだけにプリントをもう少し大きくして欲しかったと思います。

特選・KBS京都賞

「雨の宴」  武田 吉正

「雨の宴」  武田 吉正(彦根市) ※「吉」は上が土

選評

風景写真としてもネイチャー写真としても成功作です。サギの足元の草が気になりましたがアクセントになり、かえって良かったのかもしれません。ただ、右上の桜をカットしてもう少し横長の作品にすれば散った桜を強調できたのではないでしょうか。

特選・共同通信社賞

「三つ巴の旅立ち」  田村 祐二

「三つ巴の旅立ち」  田村 祐二 (近江八幡市)

選評

不思議なライティングですね。蝉の三つの抜け殻がシャープに描写され、さらにバックを黒にしたことで力強くなりました。「旅立ち」と表現した画題も素晴しい。

特選・中日新聞社賞

「歓喜」  岸 洋子

「歓喜」  岸 洋子 (東近江市)

選評

学園祭の催し物なのでしょうか、胴上げされている坂本龍馬らしき時代装束の人物と紙吹雪が迫力満点。男子生徒の伸びた手と右下の女性の生き生きした表情が雰囲気を盛り上げています。空を舞う人物の顔の表情が少しでも写っていればさらに良くなったと思います。

特選・毎日新聞社賞

「追憶―夕げ仕度の頃」  小椋 俊道

「追憶―夕げ仕度の頃」小椋 俊道(愛知郡愛荘町)

選評

戦前生まれの人間でないと、この題名の気持ちは分からないかもしれません。おくどさんや薪を使っていたこういうシーンは、写真家なら一度は撮ってみたいと思う写真です。魚眼レンズを使ってワイドに撮ったので広がりが強調され、煙と裸電球が昔を物語っています。

特選・読売新聞社賞

「柿すだれ」  伴 光藏

「柿すだれ」  伴 光藏 (甲賀市)

選評

この場所へ行き撮ってみたくなる写真です。右下に立ち上がる湯気が、単なる情景写真ではなく「生活」を感じさせる作品に仕上げています。この構図ですとピントがもう少し柿に合う必要がありますが、下の柿の影だけとか、上の障子の影だけのように二種の作品に撮り分ければ良かったのではないでしょうか。

特選・朝日新聞社賞

「初冬の朝」  朝岡 ヨソエ

「初冬の朝」  朝岡 ヨソエ (大津市)

選評

モノクローム(白黒)にすると現実の世界というイメージからは少し離れます。それだけにプリントの良し悪しが決め手となりますのでもっとしっかりした(コントラストのある)プリントが要求されます。奥行きもありほぼ完璧な構図だけにカラーで見せて欲しかったと思います。