9月4日 輝け!子どもたち~ユースシアターに託したもの~ - びわ湖芸術文化財団 地域創造部

滋賀県次世代育成ユースシアター事業は、昨年度から新たにスタートした事業で、「子どもたちの、子どもたちによる、子どもたちのため」のミュージカル公演です。歌って、踊って、楽しいミュージカルもステキですが、それ以上に大切なものを培ってほしいというコンセプトをミッションに、平成24年度で第2回目を迎えました。「大切なものを培う」こと、それは、「コミュニケーション」と「他者への理解」です。

まったく違う環境で育った子どもたちがまったく新しい子どもたちと仲間をつくり、関係を深め、絆を深めていくことが、このユースシアターの特徴です。自分たちだけが楽しむのではなく、お客様に楽しんでいただくために、自分たちもお客様と共に楽しむということに挑戦しています。

演出の西垣耕造さんは、東京演劇集団風の俳優として活躍していますが、近年は、コミュニケーション教育の第一人者として、全国で演劇ワークショップやコミュニケーションワークショップを展開しているワークショップリーダーでもあります。本来俳優として舞台出演をしなくてはならないのですが、滋賀県の子どもたちのために快く演出を引き受けてくださいました。作品のテーマは、「見えないものの大切さを分かち合う」「見えないものを見る力を養う」ということから、第一作目はサンテグジュペリの「星の王子さま」を取り上げ、好評を得ました。

演出家の希望で出演者はすべて子どもたち。大人の力を借りずに子どもたちを信じて、子どもたちの力で星の王子さまに取り組みたいという潔い決意です。また、キャスティングするときは、一人一人の子どもたちにとって今何が必要なのかという観点に基づいて、予定調和的なキャスティングでなく、子どもたちが本番までどのくらい成長するのか、という伸長度を見越して配役を決めました。このようなリスクをあえて引き受けてまでのキャスティングです。子どもたちと一体になって取り組む情熱に感動の連続でした。

コミュニケーションワークショップから始まる稽古に、当初子どもたちは戸惑います。いくつもの細い竹の棒を共演者との間につくり、それを落とさないようにいろいろな形に変化させて、体を動かしていきます。他者を感じながら、他者を受け入れながら、自分のポジションを考えていくのです。歌う前に、踊る前に、台本の読み合わせをする前に、他者との関係作りから入るこのコミュニケーションワークショップは、本番近くなって、あるいは本番の最中、奇跡ともいうべき効力を発揮します。間違っても焦らない、台詞をとばしてもみんなで助け合うことが自然とできるようになります。これには、もうびっくり、プロ顔負けです。その場を共有しているだけで幸せになりました。

現在、教育現場でいろいろな悲しい出来事が起こっていますが、このユースシアターに参加している子どもたちのように成長していくことができれば、悲しい事件もだんだん少なくなっていくでしょう。すでに、コミュニケーションワークショップを導入している教育機関も多く見られますが、もっともっとその機会を増加させていく必要があります。

また、教育機関、家庭、地域社会でなかなか解決が難しい課題については、公共劇場が率先して地域社会に貢献するべきです。文化芸術の力を活用して解決しないとなりません。そのような意味でこのユースシアターは滋賀県にとって重要な価値を示せると思うのです。

おかげさまで、新しい仲間が昨年度より大幅に増え、ユースシアターが滋賀県全域に広がっていることを実感できます。今回挑戦する作品は宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」。さっそく9月から読み合わせが始まりました。命の大切さ、東日本大震災への思いを胸に、子どもたちが稽古を始めました。

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