第63回滋賀県写真展覧会(令和6年度)
滋賀県写真展覧会審査結果
出品作品内訳
出品作品総数 | 応募者数 | 知事賞・ 特選・入選数 |
560点 | 224人 | 126点 |
審査員
山中 健次[写真家・(公社)日本写真家協会(JPS)会員]
大栗 恵[文化庁 新進芸術家海外研修制度 在外研修者]
入賞作品
総評
写真の在り方が多様化する中、作者が撮影の対象へ真摯に向き合われた作品が多く、見ごたえのある審査となった。入賞・入選作品では、単に目を引くだけではなく、作者が表現したかったことを伝えようするアプローチが強く感じられる作品にフォーカスしました。写真は視覚ビジュアルですが、見る者の感情に訴えかけ、感覚をとらえることができる。そのような写真表現の豊かさを持つ作品が増えることを今後も楽しみにしています。(大栗 恵)
知事賞
「孤食」植田 信子 (草津市)
選評
孤独な背中から感じる哀愁に、動物園をめぐる生態問題もさることながら、核家族化の加速など人間の現代社会問題をも考えさせられる作品。動物園のスナップという域を超え、訴えかけるメッセージ性を高く評価したい。シルエットや空間の活かし方も効果的です。(大栗 恵)
特選・滋賀県議会議長賞
「戦い終えて」久島 正博 (守山市)
選評
かるた大会を終えた場面でしょうか。終了の旗が揚げられ、畳の上を白と黒の衣装の子どもたちが右往左往しています。人物の顔も表情が見えないように黒くしています。モノクロならではのごちゃごちゃ感が異様さを醸し出しています。上下の黒い部分はちょっと?ですが。(山中 健次)
特選・滋賀県教育委員会教育長賞
「愛馬」常石 由美子 (草津市)
選評
優しく吹くそよ風、子供の手の柔らかさ、温度など、視覚を通じてそれ以外の感覚を呼び起こす魅力を感じます。人物や馬の顔を敢えて入れないことにより、見る者が自然と客観から主観に誘われる。風になびく馬のたてがみなど画面構成もよく配慮されています。(大栗 恵)
特選・びわ湖芸術文化財団理事長賞
「trace(トレース)」春山 太郎 (高島市)
選評
壁に描かれた色んな模様や痕跡を発見し、3枚の組写真にしています。それぞれに少しずつ違う雰囲気があり、また色彩も派手ではないことで、これは何だろうと作品の中に引き込んでいく要素があります。何枚も撮られた中から組にしたのだと思いますがナイスです。(山中 健次)
特選・滋賀県写真連盟会長賞
「前略 おふくろ様」上田 薫 (大津市)
選評
記憶に新しいコロナ禍から今もなお続く介護事情、その問題提起を感じる作品の中に、作者のまなざし、家族への愛情や切なさがしっかりと写されています。見る側が理解しやすい4枚構成で、中でも要となっている車椅子で見送る姿の一枚には胸を打たれました。(大栗 恵)
特選・KBS京都賞
「ロード」杉谷 眞人 (東近江市)
選評
雪が降った後の道路でしょうか。大胆な構図でアウトフォーカスにした作品です。右奥の端に自転車を配したことで遠近感が出て、独自の世界感が広がっていると共にモノクロの良さを十分に引き出しています。自転車にもう少しピントが欲しかったなぁと思います。(山中 健次)
特選・読売新聞社賞
「静寂の湖」奥 政紀 (大津市)
選評
シンプルな中にも深みがある色彩と画面構成で、静謐な空気感が漂う印象深い作品です。目に映る景色を、幻想的な光景に写し変える作者が持たれている独自の感覚と、杭の形態をたくみにまとめたコンポジションもそつがなく、美しく仕上がっています。(大栗 恵)
特選・中日新聞社賞
「顔」阪江 範康 (東近江市)
選評
ヌートリアが水面を泳いでいる様子を正面から捉えています。堤防の上などから撮影することは簡単ですが、これは水面ぎりぎりで撮影し、併せて、水面に顔が写り込んでいます。なかなか撮れそうで撮れない場面で、努力の跡が伺えます。執念かもしれませんが・・・。(山中 健次)
特選・毎日新聞社賞
「浜辺のアート」山脇 正雄 (大津市)
選評
貝の足跡でしょうか。枯葉と構成された画面の切り取り方も良く、無彩色な中にも存在するトーンの抑揚が魅力的で、まさに砂のキャンバスですね。一見シリアスに感じる作風ですが、通り過ぎてしまいそうな部分に着目し、楽しんで制作される姿が目に浮かびます。(大栗 恵)
特選・NHK大津放送局長賞
「親孝行」井口 達也 (近江八幡市)
選評
食堂を営む親子のようです。商いの休憩時間に子どもが父親の肩をもんでいるようで、父親の表情に安らぎが垣間見えます。右側にケチャップのようなものも写っていることで、食堂の雰囲気も伝わってきます。優しい子どもにエールを送りたくなりますね。(山中 健次)
特選・京都新聞賞
「朝練」髙木 美幸 (大津市)
選評
シルエットとなった人物から躍動感が溢れ、かけ声が聞こえてきそうな和やかな活気があります。瞬間を写し留めるという手段で「動」を見せる、写真ならではの特性が活かされていることにも着目したい。横長に仕上げられた画面構成にもセンスの良さを感じます。(大栗 恵)
特選・朝日新聞社賞
「冬時雨の詩情」平野 康雄 (守山市)
選評
木の枝に水滴と枯れ葉をまとった3枚組写真。全て、周辺を少し白っぽくして、見る者の視線を真ん中付近へ誘っています。3枚のそれぞれの作品において葉の数や木の種類にも違いがあることで、バランスが良くなり詩情豊かです。(山中 健次)
特選・時事通信社賞
「生命の源」左野 賢治 (守山市)
選評
モノクロームで黒を極限まで切り詰められた作風からは、ネイチャーフォトというカテゴリだけでは語れない、心象的なスティルライフ(静物写真)を想わせる力強さがある作品。また、一枚で見せる潔さに、熟練された作品作りへの取り組みが伺えます。(大栗 恵)
特選・共同通信社賞
「静寂の刻」中村 和樹 (高島市)
選評
落日後の僅かな時間帯に撮影したのでしょう。全体的にブルーが支配する中、壁に描かれた女性の顔がライトアップされて木の枝の間から浮き出ています。何とも言えない少し華やかで少し寂しい光景で、印象的です。映画の一場面のようにも見えます。(山中 健次)
特選・産経新聞社賞
「龍章鳳姿」岩井 俊祐 (野洲市)
選評
流動感を誇張させた劇画的な描写が、見る者の目を惹く一枚。モノクロームで斬新な画面構成に独特な街並みの表現から、どこか別世界を見ているような現実離れした感覚を呼び起こさせます。写真圧着の際に少し浮きが出てしまったことが惜しまれます。(大栗 恵)
特選・BBCびわ湖放送賞
「風のアート」吉村 英光 (栗東市)
選評
何の木か分かりませんが、赤や白の網が木にまとわりついています。元々カラスなどから実を守るために木に網をかけていたのか、それともどこかから飛んできて木に引っかかったのか分かりませんが、光線状態も良好で作者の発見の目の鋭さに乾杯です。(山中 健次)
特選・エフエム滋賀賞
「追憶」 今井 三千織 (守山市)
選評
まったりとした時間を感じる光感、ハイキーで暖かい色調がノスタルジックで、表現内容によく合っていますね。額装仕上げにも熟考された創意を感じます。被写体との距離感にもう一工夫バリエーションがあると、更に魅力的な仕上がりになったかと思います。(大栗 恵)