滋賀県文化振興事業団に勤務して早くも3年目を迎えます。滋賀県民としては、まだまだ新人の私が、三方よしの劇場経営をエッセイとして執筆するのは大変おこがましく、恐れ多いことであります。しかしながら、三方よしの経営理念を公共劇場のアートマネジメントや作品制作の創造現場に活かすことを目指したいと考えています。その願望と決意の表れとご理解いただければと思います。
三方よしは言うまでもなく、近江商人の売り手よし・買い手よし・世間よしという考え方から成り立っていますが、今日でいうところの社会起業家(entrepreneur)が考えるミッションに近いのではないかと思われます。ただ単純に売り買いだけでの人間関係や経営における効率性や生産性のみを求めるのではなくて、その経済活動が人と地域社会を豊かにし、人様のお役にたっているという社会貢献活動としての主体的活動なのではないかと捉えています。社会全体が潤い、人が生き生き暮らせる世の中をつくること、すなわち、地域社会を創造していくということなのだろうと思います。当事業団が管理運営する2館の劇場経営は、是非、その三方よしの原理に学びたいと思いますし、滋賀県の文化芸術振興に寄与する創造発信型の活動拠点となりたいと考えています。
平成23年度からは第2期目の指定管理者制度がいよいよスタートし、平成25年度までの3年間に渡り、多彩な事業を展開していくことになります。第2期目からの特徴は、従来の貸し館事業、鑑賞公演、教育普及などの事業に加えて、プロフェッショナルな自主制作事業を中長期的に実施していくことになります。また、その制作体制を強化するため、2館の機構改革も行いました。より専門性の高い事業を事業団自らで制作することは、組織としての知的動的体力を問われるところです。
一方、鑑賞者の視点からは、鑑賞機会の選択肢がより幅広くなるという利点に加えて、滋賀県の魅力を国内外に発信できるという戦略に通じています。また、未来の滋賀県を担う子どもや若者たちの次世代を主な対象に、積極的な参画と機会を促す事業を組み立て、大いに世界に羽ばたいて活躍していただこうという期待も込められています。
次回からは、先月23日、文化産業交流会館で行われた「伝統と創造シリーズⅠ―受け継がれゆくもの-」のご報告と平成23年度の抱負をお話ししたいと思っています。これからも、どうぞ、よろしくお願いいたします。