梅雨明けが待ち遠しい今日この頃ですが、本年は、オリンピックイヤーということで7月27日の開幕も待ち遠しく、閉幕までは睡眠不足の日が続きそうな予感です。そのオリンピックを前に17日から25日まで、恒例の英国地域劇場の調査にでかけます。英国では、2011年保守党への政権交代が行われ、文化予算の大幅なカットがありました。それに伴い、地域劇場や芸術団体への公的助成金の見直しも実施され、新しい評価制度を模索していました。
このたびは、新しい評価制度に取り組み始めた地域劇場と機構改革が行われたクリエイティブ・スコットランド、そして、10年間の戦略的なミッションを掲げ、公的助成金の見直しを行った英国芸術評議会の実施状況を見聞してまいります。この様子は、また後日ご報告したいと思います。
さて、3.11東日本大震災後、復興・復旧にはまだまだ時間を要している現状ですが、当事業団は、震災直後から「復興への祈りと行動メッセージ」として、滋賀県内に居住しておられる被災された方々への支援を行っております。ささやかな支援ではありますが、年間に行われる鑑賞公演や自主制作公演にご招待をお出しして、ご希望の公演にご来場いただいております。
昨年度から実施しました明治の芝居小屋長栄座復活事業ですが、3.11以降に新たにスタートした自主制作事業として、優秀な作品を提供するだけではない、いろいろな社会的ミッションを持った事業として取り組んでおります。特に3月に行われる陽春公演では、震災の記憶を風化させてはならないという思いと、未来ある子どもたちの幸せを願うというテーマを込めた作品づくりに力を入れております。
震災から時を経れば経るほど、被災された方々の思いは焦りや怒り、諦めや将来不安など、さまざまな思いが混在してきているのだろうと推察できます。公演のご来場者の数もやや減少気味であることが伺え、これから我々はどのようなサポートが必要なのか、日々考え、逡巡しております。
心に寄り添った支援は今後も継続していかなければなりませんが、1年を過ぎた今は、痛みを分かち合う支援によりシフトしていくべきではないかとも思います。経済的な支援が目に見えるような形で実現していかなくては被災された方々の漠とした不安はぬぐい去れないのではないかと考えるからです。
文化庁からの助成金を活用させていただき、長栄座事業を実施している我々ですが、震災復興への補正予算が第三次まで進み、本年度の文化予算の2割から3割は、心の復興支援として予算化されました。もちろん長栄座事業も約2割の助成金が減額されましたが、東北の方々の心の復興支援のことを思えば痛みは感じません。むしろ緊張感ある痛みとして捉え、今ある財源でよりよきものを製作するよう創意工夫が働きます。
本年3月には、文化芸術による復興推進コンソーシアムも設立されました。その報告書には、こう書いてあります。「文化庁を始めとして、芸術家、芸術団体、文化施設、助成財団、企業、NPO法人、芸術系大学、文化ボランティアなどが、被災地の復興・再生の状況や被災者の求めについて情報を共有し、それぞれの特徴を活かしながら、密接な連携協力のもとに文化芸術活動を展開することによって、被災地の復興に寄与することを目的とする」と。
これからも、我々は、3.11のことを次代へ語り継ぎ、記憶を風化させないよう、いろいろな方法でメッセージを発信していかなくてはならないと思います。文化芸術は、生きる活力です。文化芸術の力を、復興の力に変えていく努力を継続していきたいと改めて心に刻んでおります。