平面の部
  平面出品作品総数     平面応募者数  
 審 査 員 
 入 賞 作 品 
281点
259人
伊庭新太郎氏(欠席)・烏頭尾 精氏

榊原吉郎氏(※)・原田平作氏

福本達雄氏・渡辺恂三氏 (※吉は土に口)  

以下のとおり
(敬称略)
【総評】(原田平作)
 それぞれに努力の結晶と言ってもよい281点から125点を選ぶ作業は、いつものように骨の折れる疲れる仕事であったが、入落選をきめる鑑別後の賞をきめる審査は、二回の投票をおこなっただけで話合いによる選定となり、比較的スムーズに終った。このような審査はこうした展覧会ではあまりないことで、結果の良し悪しは別として、私としては率直なご意見が聞けて得るところが大きかった。

 ただし展覧会の方は総じて言うと、昨年より全体に優秀作が少なかったように思われ、それがこうした結果をもたらしたと言えなくもない。これは私だけの意見ではなく、審査員の各先生方のご意見だったと思う。これを向上させるには、われわれを含めて関係者が一層の努力をする必要があろう。

 なお最後にこの機会にも感じた一般的な意見を付言しておくと、描写対象に引きずられ過ぎた画面は、何となくカサカサになり詩情が感じられず、面白くなくなる。そして逆に構想力の方が先立ってしまうと存在感がなくなって、共感がわかなくなる。優れた作品というものは、言わば、両者の間にあるというものであろう。こんなことをここに付け加えておくこととする。

【選評】
● 芸術文化祭賞
[作品評]
 油彩画が多く出品される中で、膠彩(日本画)による作品が少ないのが残念であるが、日本画による受賞作が注目された事は喜ばしい。
 画面一杯に描いた花の描写が象徴的である。美しい線描による花の表現に作者のこのテーマについての自信がうかがえる。
 花のもつ華やかさが漂い空気感が見られるので風景画を見る様でもあり魅力的な作品となっている。 
                     (烏頭尾 精)
「anitya」 藤本 達子
● 特選
○滋賀県美術協会賞
[作品評]
 白黒での画面に力強く象の動きを表現されていて好感が持てる。画面の処理に今一足の繊細さがあればと思われる。
                    (福本 達雄)
「共存」 宇野 曰
● 特選
○KBS京都賞
[作品評]
 東京の庭園美術館(旧朝香宮邸)の3階はサンルームの如き小さな一部屋です。この犬はそんなところで飼われているんでしょう。グラフィックな処理、パソコンも写真も使っているんでしょうね。陰影にも理屈に合わない所が多々ありますがそんな貼り込みっぽい違和感は却って作者の意図したものなのでありましょう。犬の眼つき、表情ともよくマッチして不思議な空間を演出しています。椅子の影を見て下さい。浮いているじゃないですか、犬がキョトンとする訳です。
                   (渡辺 恂三)
「トニーと白い椅子」 望月 高明
● 特選
○共同通信社賞
[作品評]
 閉じられた扉の下手前に板が張られ、右中央には円形の跡がほの見える。どうやら廃屋のようだ。落着いた静かな世界が全体から感じられるが、それは茶系に全体をまとめ、水彩を巧みに使ったからこそ生み出されたと思われる。言い換えると軽みを保ちながら重厚感を出しているという感じで、思索的とすら言ってもよいかもしれない。
                     (原田 平作)
「刻」 加藤 和昭
● 特選
○京都新聞社賞
[作品評]
 現代都市の一遇を俯瞰する作者の意図が独自の色調によって描きだされる。複雑に入りくんだ日常生活の様相を捉える面白さを感じる。電柱に結びつけられた都市生活を象徴しようとしている。
            (榊原吉郎(※ 吉は土に口))
「電柱のある風景」 篠原 俊一
● 特選
○産経新聞社賞
[作品評]
 湖畔の詩情が画面にうまく表現されている。色彩に明度が有れば。後の杜の白さなどに明るさがほしい。
                     (福本 達雄)
「冬の溜池」 坂田 吉藏 (※ 吉は土に口)
● 特選
[作品評]
 現実の瀬戸の海は描かれていない。そこに在るものは「ふるさと」に対する作者のイメージの中に生きつづける暖かな心象風景であろう。左下の渦巻く色彩は海の象徴だろうか。
          (榊原 吉郎(※ 吉は土に口))

「ふるさと(瀬戸の海)」 日浅 順子
● 特選
○中日新聞社賞
[作品評]
 廃屋の風情がいい。建物が古いといっても遺跡の様な古さではない。幽霊船の様にどこかに人の気配さえする。吹き込んで来るそよ風も、薄ら寒い中にも暖かさをさえ感じられる。
                    (渡辺 恂三)
「光待つ場所へ」 藤田 裕子
● 特選
○滋賀県文化振興事業団理事長賞
[作品評]
 板戸の前にザックを背負って立つ青年。犬が三匹と電話ボックスが2台。「遠い記憶」だからであろう。かすれた姿態になっているのと、無造作な板にミクスト・メディア(いろいろな顔料)で描かれていることが、画題にぴったり合っている感じだ。一層のご活躍を期待いたしたい。 
                     (原田 平作)
「遠い記憶」 ノブチ ヒロシ
● 特選
○滋賀県造形集団奨励賞
[作品評]
 作者の制作に対する気持ちがよく伝わって来て好作と思いますが、よくある構成、色彩で技巧が先に目に入ります。次作に期待します。  
                     (福本 達雄)
「蓮」 塩賀 史子
● 特選
[作品評]
 黒ずんだ色で統一された画面から、廃屋のもつ空気が伝わってくる。その色彩に艶があり青黒い色が、とても魅力的である。
 崩れ去る建物の柱の描写に作者の関心の強さが表出されている。背景が省略されているので、より印象的な表情を見せている。
                      (烏頭尾 精)

「解体」 肥後 訓次
● 特選
[作品評]
 真ん中に筋の入った四角い窓の両側に膨らんだ三角部分が付き、六角形になっている。それが九つ。少しづつ姿を変えて三層に並んでいるわけであるが、全体としてそれぞれの生活感がにじんだ一つのリズムのようなものが感じられる。これがこの作品の見どころというものであろう。ただしこうした画面構成はよく見かけるもので、作者は注意して進む必要があるように思われる。 
                      (原田 平作)
「六角形の窓」 河村 友文
● 特選
[作品評]
 現代風俗の中に浮遊する若者達をポップ感覚で捉えています。気楽な遊び感覚で絵が出来上がっている。何のつもりで十字架を思わせる様に釘を散らかせていることに深読みする必要はないだろう。ニュージーランドらしき国旗に釘がささっているのはイタダケナイ。
                       (渡辺 恂三)

「釘応えU」 吉岡 ちえこ(※ 吉は土に口)
● 特選
[作品評]
 無機的な道具類が構成的に構図されているが、画面全体から、おだやかな空気が漂ってくる。色彩が美しいからか。道具のペンキに彩られた表示などを押えた色彩で楽しげに描き込まれている作者の色彩感覚に感心させられる。背景の壁の面が意識され美しい絵画となっている。 
                       (烏頭尾 精)
「一隅」 伊賀 侮q
● 特選
○BBCびわ湖放送賞
[作品評]
 二人の婦人はワルツを踊っているのだろうか。明るい画面は透明な空間を提示している。婦人を描く茶色は視るものにどこかエジプト女性を想起させ、それも若い人のイメージが浮かび上がる。
           (榊原 吉郎(※ 吉は土に口))
「マダム de マダム」 若狹 洋子
● 佳作
「娘」 大栢 美岐
「刻」 西田 啓代
「京阪高架下」 奥田 孝作
「Spring」 後藤 裕子
「青への羨望」 溝口 圭子
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