第50回記念滋賀県写真展覧会(平成23年度)
出品作品総数
577点
応募者数
293人
入選数
140点(※芸術文化祭賞・第50回記念展賞・特選含む)
審査員
橋本 健次氏(写真家・日本写真家協会(JPS)会員)
中田 昭氏(写真家・日本写真家協会(JPS)会員)
入賞作品
総評
第50回記念展となり、従来の特選に加え記念展賞という賞が加わった。自然風景やスナップ、心象風景など、普段の力量を存分に発揮した作品も多く集まった。カメラのデジタル化や高性能化に伴って、表現の領域が広がった反面、過度に調整しすぎな作品も目立つようになってきた。自分自身の感覚と技術の調和を図りながら作品づくりをしてほしい。
芸術文化祭賞
「海苔漁寸景」 伴 光藏 (甲賀市)
選評
この見事な海苔の収穫場を作るには、長い年月がかかったことでしょう。この夫婦にとっての命と心だと思います。写された時間帯がよく、上下の黒場が画面を引締め、手や顔の動きが穏やかで人工と自然がうまく噛み合い、人間がさりげなく生きる姿が写っており、いつまでもそうありたいと願う写真のように感じられました。
第50回記念展賞
「たちあがれ日本!!」 中井 早智子 (大津市)
選評
昼間見ると無機質になりがちなコンビナート景色を、長時間露出による夕景で美しく表現。雲と水蒸気(?)の白い筋が、画面にメリハリをつけ、ひとつのポイントになっている。作品名の付け方にひとひねり必要。
特選・滋賀県議会議長賞
「魔力秘める花」 瀬戸口 律子 (彦根市)選評写真表現の上で大切な光が感じられる写真です。組写真としては少しまとまりがありませんが、一枚一枚の写真がしっかりしています。特に左のユリの写真は、さりげない影の出方がよく、そこに作者の感性の鋭さを感じました。 |
特選・滋賀県教育委員会教育長賞
「いざ出陣!」 北東 幸男 (東近江市)選評御輿渡御が鳥居をくぐる瞬間を象徴的に捉えた。撮影ポイントの熟知などが、画面に反映出来た。逆光の中で、影にいる武者姿の二人の扇子を上げたシルエットが効果的。砂塵の中で見える御輿との組み合わせで奥行き感が出ている。 |
特選・滋賀県文化振興事業団理事長賞
「湖の狩人」 中川 敏和 (長浜市)選評作者はテレコンを使用したとのことであるが見事に鶚(みさご)の目にピントが合っている。狩の名手で大きな魚をしっかり形よく捕まえた瞬間、背景の黒場もよく、何と言っても羽根の形がよい。タカの仲間としては小さいがスケールの大きな写真に仕上がった。 |
特選・滋賀県写真連盟会長賞
「紅土地」 小梶 富士雄 (東近江市)選評色彩の組み合わせが、画家・モンドリアンのコンポジションを見ているような不思議な作品。紅花の色なのか、全体に落ちついた色彩で、差し込んだ光によって画面に立体感が出た。作者の冷静な構成力が生かされた。 |
特選・時事通信社賞
「幽玄の夜明け」 田中 延子 (大津市)選評厳寒の地、塒(ねぐら)から白鳥がいつ飛び立つのかドキドキです。川霧が立ち込め太陽が昇るその時に、集団が餌場に飛んで来ることは年に数回。少しレンズは短いが、マイナス14℃~20℃の中、見事に写し止められました。 |
特選・共同通信社賞
「湖のワルツ」 中西 博樹 (蒲生郡日野町)選評深く沈んだ色彩の湖に浮かぶスイレン。中心の赤い色の葉が全体のポイントになっている。偏光フィルターを使った光のコントロールやプリントの濃度なども効果的。作品名にあるように、音楽が聞こえてくるようだ。 |
特選・産経新聞社賞
「静寂の音」 小西 昭彦 (大津市)選評木はその場所から動くことも出来ず黙々と樹齢を積み重ねていきます。どの部分をどう切り取るか、広角レンズにより肉迫し、その生命力が表現されました。フレーミングの大切さ、微妙な光のコントラストが見事に出ました。 |
特選・NHK大津放送局長賞
「南国の朝」 栗原 眞純 (大津市)選評撮影旅行での演出された1シーンであるかもしれないが、天秤棒で荷物を運ぶ女性のシルエットが、異国情緒をかき立てる。ただ、露出オートで撮影したせいか、背景の朝焼けの空の色や、手前の砂丘の黒にに中途半端さが残った。どこに露出ポイントをおくか、さらに試行して欲しい。 |
特選・京都新聞社賞
「花びら先についた 氷のスニーカー」
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特選・毎日新聞社賞
「明鏡止水」 山本 紀夫 (長浜市)選評お祭りの一場面、化粧した静かな表情の少年(?)の姿が鏡に反転して、実と虚の境界を彷徨うような画面づくり。もう少し絞りを開放気味にすると、さらに効果が出たと思う。難解なタイトルの意味は「一点のくもりもない鏡のように、すみきった心境をさす」と辞書にある。 |
特選・中日新聞社賞
「ボクにちょうだい」 廣部 芳美 (長浜市)選評川蝉(かわせみ)は写真になる鳥です。それは羽の色合いと子育て、それだけによく見受けます。ほとんど成鳥になった子供に餌をやる親、左の親はまだやるのという感じです。右上から差し込む光が斜光になり、添え木の下部が黒くなったことで立体感が出来ました。 |
特選・朝日新聞社賞
「神さまはどこ?」 山岸 美佐恵 (大津市)選評題名の付け方がいいです。モノトーンで注連縄(しめなわ)と棚の結界で仕切られています。着色カラーのような色の付いた少年、ファインダー内で神様を探しているのか思わず右足が浮いてしまった、そこがこの写真の見せ場でリュックもよく現代が写りました。 |
特選・読売新聞社賞
「炎の舞」 松浦 康雄 (大津市)選評画面いっぱいに大松明の炎が弧を描き、迫力が出た。その中にいる若者の表情が、ストロボの光で浮かび上がったのが効果的。シャッタースピードや、タイミングなど、試行錯誤をくり返して生まれた作品で、トリミングなどにも熟練度を感じる。 |
特選・BBCびわ湖放送賞
「レクイエム」 北中 實 (大津市)選評彼らに安息を、ボンネットの緑色がいいです。高速道路を何キロで走り誰が運転していたのでしょう。もう走れない、今も捨てられずに残っている不思議な光景です。彩度を抑えられたこともテーマと合いました。 |
特選・KBS京都賞
「入り日射す」 小椋 俊道 (愛知郡愛荘町)選評土塀に残る西日の中に、二人の自転車のシルエットをタイミングよく捉えている。壁の直線に木漏れ日の曲線が効果的で、手前の地面に残る白い筋で画面に奥行きが出た。作者の日頃の観察力が生かされた作品である。 |
特選
「恋の季節」 小川 正一 (近江八幡市)選評面画がシンプルに構成されていて、「ヨシキリ」の嘴(くちばし)に目がすいよせられ、鳴き声まで聞こえてくるようだ。ただ、超望遠レンズとオートフォーカスカメラの組み合わせは、どうしても主被写体を中央に置き気味になる。次回からの課題として考えて欲しい。 |