第39回滋賀県芸術文化祭

第48回(平成21年度)滋賀県写真展覧会の入賞作品

○出品作品総数    593点

○応 募 者 数    298人

○審  査   員   中村吉之介氏(写真家)・神崎順一氏(写真家)

○入 賞 作 品   以下のとおり(敬称略) 
【総 評】

 昨年同様多数の応募があり、苦労しながらも快(こころ)よい緊張感の中で選考を進めることができました。それは、昨年お願いしていた「新しい視点で創作してください」の答えを、多くの作品上で接することができたからです。このような柔軟さや積極性は基礎力があってのことですが、プラス平素の地域指導者のたゆまぬ努力の賜物と改めて感心、この良き伝統をぜひ続けていただきたいと思います。応募作品もほぼ平均点に達していましたが、当落について言うと、技術的な側面はあるにせよ、問題は被写体に対する心のブレです。迷いがあると画面がどうしても臆病になり訴求力に欠けます。まず気持ちの贅肉をそぎ落とすことが、良い作品を生み出す第一歩でしょう。しかし、今回は普段見落としそうな風景の中から、写真的にうまくまとめ上げたものや、ストレートに楽しい写真等も多く、好感を持って拝見しました。

●芸術文化祭賞
「黄龍・五彩池」 田中 孫治
[選評]

 雪と見間違えるばかりの真白な石灰岩の池にたたえられた、透きとおるようなブルーの水。まずこれに心を奪われてしまった。全体の構図、色のバランスもよく、夢のような美しい雰囲気を持った作品に仕上げている。

●特選・滋賀県議会議長賞
「海の彩り」 清水 靖信
[選評]

 濃いブルーの海と敷き詰められた褐色の網、強い日差しに、色のコントラストが強烈な印象を放つ。切り取られた構図も巧みだ。画面隅に点景の人物を配したことでスケール感も出ている。

●特選・滋賀県教育委員会教育長賞
「雨上がり」 小椋 俊道
[選評]

 カマキリと蓮の実、この奇妙な組み合わせをずばり正面から捉えた思いきりのよさが成功した。雨の日のしっとりした色調、水滴も効果的。背景の山とのバランス等々作者の新鮮なアイディアに脱帽。

●特選・滋賀県文化振興事業団理事長賞
「投  影」 中西 大勝
[選評]

 眼前に広がる風景のどの部分が大切か、瞬時に考えうまく切り取ったお手本のような作品だ。光の強さが不要な部分を隠し、船頭のシルエットで躍動感を表した。写真表現の特徴をよく理解し、それを生かしきっている。

●特選・滋賀県写真連盟会長賞
「惜  春」 岸 洋子
[選評] 

 人物の表情を出さず、色とりどりのパラソルでそれを表現し、加えて雨中にもかかわらず、それが明るいリズミカルな印象を与えてくれる。仏様が子どもたちに優しく語りかけるようで癒され、ちりばめられた桜の花びらが季節感と全体を引き締める役割を担っている。

●特選・中日新聞社賞
「陽 ざ し」 小菅 正一
[選評]

 普通だったら見逃してしまいそうな風景を、光と白黒と言う選択肢で上質な作品に仕上げている。白黒が輝いていた時代の、アンセル・アダムスやウエストンの作品を思わず思い出してしまいそうなアート作品だ。ピントがもう少しシャープであれば…。

●特選・日本放送協会大津放送局長賞
「蓮池のアート」 武藤 幹男
[選評] 

 蓮池はとかく煩雑でまとめにくいものなのだが、良いアングルを発見した目を評価したい。絵画の名作を思わせる構成力と色感覚、コントラストの程よい陽ざしの中での撮影。蓮を写した写真の新しい表現感覚を示してくれたようだ。

●特選・毎日新聞社賞
「誰だろう?」 小西 昭彦
[選評]

 白をベースにしたモノトーン表現はとても上品だ。テントの曲線、そのバランスの妙。黒い空間から視線を投げかける猫の配置、これも絶妙だ。猫の顔にジャギーがある、シャープさにかける、それがただただ残念だ。でも、作者のこのタッチ、感覚はすばらしい。ぜひ大切にしていただきたい。

●特選・BBCびわ湖放送賞
「影」 三島 康嗣
[選評]

 カラーでありながら白黒のような印象を受ける繊細な作品だ。森の一隅、シダの光と影に敏感に反応した作者のカメラアイはすばらしい。背景になる幹のディテールもよく出ているが、暗部の覆い焼きで奥行きがいま少し出るように思う。

●特選・時事通信社賞
「閑  日」 山本 璋子 [選評]

 都市空間を端的にまとめ上げた秀作。3枚組は難しいとされているが、造形物を両脇にそろえ、中央にシンメトリーな全景を配置、都市の中にある不気味な静けさ、異次元に迷い込んだ不思議さ、人工自然を感じさせる。アングルのよさ、レンズ選択の巧みさが際立つ。

●特選・産経新聞社賞
「水面の華」 河田 和子
[選評]

 水面がまるで、豪華な花火が描かれたテーブルのようだ。実に面白いアングルを発見したものだ。とかくイベントは眼前の光景だけに目を惹かれがちだが、これは写真の面白さここにあり、という良い作例。後ろ向きの観客・・・確かな構成

●特選・読売新聞社賞
「佳麗蓮池」 八田 一徳 [選評]

 強い光、飛び出てくるような立体感、シャープさ、写真だけが持つ独自の表現をうまく生かした作品だ。群像の中からイメージした部分を探し出す苦労がしのばれるが、自然世界がよく描かれておりブルーグリーンを基調としたトーンも素敵。

●特選・KBS京都賞
「支  度」 北中 實
[選評]

 タイトルからすれば背景描写が足りなくもないが、それとは別に画面からは「おんな」の情念のようなものを感じる。撮影会の作品なのだろうか。さすれば半光沢で仕上げたこと、両端の焼き込みを選択したことで、奥深い表現になり作者の思いは十分成功したと思う。

●特選・京都新聞社賞
「Humorous」 山川 慶子 [選評]

 人間が撮りにくい時代になってしまったが、このような焼き物の狸の表情を拝借して世相を表現するのも実に面白い方法だ。信楽であろうか。多くの狸を前に、思いの狸を捜し求める作者の姿も又ユーモラスか。

●特選・日本経済新聞社賞
「バックシャン」 阿部 充博
[選評] 

 写真の魅力はやはり新鮮な視角にある。観察がいかに大切かこの作品は教えてくれる。大胆にして繊細、アングルのよさ、無背景、これらが合わさって自然創造の美しさが伝わってくる。

●特選・共同通信社賞
「Red Carpet」 三上 発代
[特選]

 コンパクトカメラでも水中で写真が撮れるようになり出品作品も多くなってきた。特殊な水の中とはいえ、やはり主題を絞り端的にあらわすのは地上の世界と変わりない。少しダークな色調、触角の躍動感、魚とのバランスをうまくまとめている。

●特選・朝日新聞社賞
「水 舞 台」 大前 岳雄
[選評]

 うまいタイトルだ。まさに自然のステージを思わせる。流れる堰を絶妙の感でとらえているし、サギのバランスやシャッターチャンスも良い。日本人が心の奥で持っている美意識が表現されている。

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