平面の部
 平面出品作品総数   平面応募者数 
 審 査 員 
 入 賞 作 品 
265点
240人
伊庭新太郎氏・上平 貢氏

烏頭尾 精氏・原田平作氏

福本達雄氏・渡辺恂三氏

以下のとおり
(敬称略)
【総評】(上平 貢)
 広大な琵琶湖を抱く近江の里−その分厚い歴史と風土は、今も滋賀の人々のかけがいのない宝です。生きものの暮らしを支え、多くの生命を育むとともに、文化や芸術の限りない創造の源泉もここにあります。

 63回を数える県展は、本年の「平面」も例年に劣らず、出品者の協力で新しい美術のエネルギーを結集することができました。とくに女流作家の活躍は目覚ましく、いのちの母の力強いパワーを感じます。

 入賞者の顔ぶれも、芸術文化祭賞の若い岡本里栄さんをはじめ、上位の席の多くを女性の方たちが占めました。それらは、いずれも力感あふれる意欲作です。主題も多岐にわたり、現代の社会に、そして自分自身にも肉迫して、内面を深く凝視するみずみずしさが溢れています。毅然と未来に目を開く逞しい青春像もあれば、現代都市の苦澁と喧噪を鋭く暴く風景画もあります。一方、明るく健康に生き抜こうとする快活な人間模様を描く、自在な作域も散見されます。

 県展らしく、本展の出品者の世代層もいろいろで、作品の表情に人生の豊かさを反映しています(烏頭尾)。しかし、何を訴えたいのか、焦点が絞りきれていない作品もあり、中には程よくまとまった静かな表現に対し、もっと元気よく、インパクトのある強烈な発信を望む声(伊庭)もありました。その点、やはり受賞作の中には、独自性のある力のこもった創作ぶりが見られ、将来が楽しみな個性的作家の輩出を期待する声(原田)も出ていました。また、発色やマチエールの強い油彩画に伍して、今回、日本画や版画の領域からの積極的な進出が目立ったことに注目する意見(福本)もありました。

 私たちはみんな、県展「平面」の一層の発展を願っています。例えば、琵琶湖の上の抜けるような青空を、カラーも鮮やかに熱気球で浮遊するような、自由の風を楽しみたい(渡辺)と、イメージの拡張を呼びかけるのもその一つでしょう。既成の殻を破ってください。明日の美の世界への飛翔を夢見ています。

【選評】
● 芸術文化祭賞
[作品評]
 近くで見るとかなり筆致が跳ねていて達者なひとですね。自画像ですか?このままでは誰かの絵を連想してしまいます(アメリカのちょっと今名前を思い出せませんが−)。

 これからの注文、色を使うこと。もっと描きっぱなしでよし。形をまとめようと思うな。白を使うな(ベンジンで拭きとれば、もっと味が出るなど)。(渡辺恂三)

「One's eyes」 岡本 里栄
● 特選
○滋賀県美術協会賞
[作品評]
 大都会の夜の風景、ビルや歩道標示、人の群れ等都会の雑然とした寸景を多分に劇的な光で制作していている。都会生活の印象がふと匂い立つ秀作である。(伊庭新太郎)
「街'09」 山元 敏子
● 特選
○滋賀県文化振興事業団理事長賞
[作品評]
 鯉のぼりを中心に大自然のさまざまなものをうまくまとめている。三角山をアクセントに音楽を聞くような作品でもある。昨年に較べるとアクセントが出てきているように思われる。(原田平作)
「三角山のこいのぼりたち」 井上 知枝
● 特選
○NHK大津放送局長賞
[作品評]
 日本画顔料を良く生かし爽やかな画面に仕上がっている。作者の愛情を感じ取れる好作。(福本達雄)
「うらら」 牧野 昌代
● 特選
○京都新聞社賞
[作品評]
 「ガリガリ博士」という古い(1910年頃かな)映画を知ってますか?その映画の背景を思い出します(ツタヤで借りられないかな?)。注文としては色が良くない。特にこのクリーム色。昭和の初めのイラストなどで参考になるヨ。(渡辺恂三)
「港の見える町」 宇都木 裕子
● 特選
○中日新聞社賞
[作品評]
 ヌケヌケとした明るい濁りのない色感が好きだ。それでいて微妙なトーンを色の重なりで出しています。私のイチオシです。他にこんなの無かったもん。(渡辺恂三)
「伝言T」 若狹 洋子
● 特選
[作品評]
 暗い空に作者は何を見つけたのだろう。この暗い空に不思議な形が漂っている。暗い港町は現実にない町かも知れない。この暗い画面で最も魅力的なのは空である。何げなく描いた画肌が素晴らしい。(伊庭新太郎)
「空」 篠原 俊一
● 特選
[作品評]
 特別な型に焼成されたこの密度が新鮮である。画面を水平・垂直に分割した背景が構成をしっかりとし、絵にまとまりを与えている。色彩も強い寒色と暖色を使用し非常に力強い印象が心地よい。(伊庭新太郎)
「焼成」 大西 克美
● 特選
[作品評]
 破れた防音シートから覗かれる向こうの世界を表したものであろう。柔らかい横縞とそれがつぶれた白い面などが一種のリズムを作っていて、閉鎖的ながら新しい世界を作っている。木版でも銅板でもない版の面白さを発掘した作品ともいえよう。 (原田平作)
「防音シート」 河村 友文
● 特選
○KBS京都賞
[作品評]
 板画を思わせる様な表現で水面が良く描けている。中間色の使い方に今一歩工夫がほしい。(福本達雄)
「錦秋」 松島 良一
● 特選
○読売新聞社賞
[作品評]
 美しい色彩と共にメリーゴーランドの雰囲気が良く表現出来ていて、拝見していて楽しくなる。(福本達雄)
「メリーゴーランド」 仲川 千秋
● 特選
[作品評]
 お面をかぶって異常な心理をもって日常の世界を見つめている姿には、意外性があって面白い。昨年度芸術文化祭賞を受賞した作家であるが、昨年のブーツが果たしたような力強さはひまわりからは感じられなかった。(原田平作)
「アルコウ」 小泉 宏明
● 特選
[作品評]
 日本画の応募の少ないことが気になる。そうした中で、表情豊かにひまわりの花が描かれて、好作となっている。画面上部に動感に満ちた花が配され、その下部には、静かな描写による草木が構図されているので、ひまわりの動きが増幅され魅力的である。(烏頭尾 精)
「晩夏」 白井 陽子
● 特選
○滋賀県造形集団奨励賞
[作品評]
 人物を真正面から描かれているため、元気さが伝わる。人物を一方に寄せ植物を配しているので、風景が見える様で楽しい。全体を茶褐色で統一させているので美しい。(烏頭尾 精)
「清濁」 藤野 裕美子
● 特選
[作品評]
 非具象による表現のため色彩と形態の美しさが際立つ、音楽的なリズム感が漂ってきて楽しい気分に誘ってくれる。 (烏頭尾 精)
「風の交響楽」 伏原 叔子
● 佳作
「森の中へ」 梅原 絹子 
「お祭り」 中村 敏子
「地の声」 増永 珠恵
「古代への郷愁」 河野 真弓
「希望」 長島 秀夫
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